toggle menu

モンゴル ゲル地区再開発プロジェクト

プロジェクト概要
ゲル地区の実情

大量移住で出来た都市周縁地域・ゲル地区

ウランバートル住民の 60% がゲル地区に居住

1992 年におこった社会主義から自由主義への体制転換によって、職業選択や住居地選択が自由化され、それに伴って医療・教育・就業機会といった都市の魅力が急速に高まりました。これが地方からの放牧民の流入を招き、2000 年初頭頃には全国民の15%にあたる人口がウランバートルに一斉移住しました。総人口に対するウランバートル居住率は現在44%にまで上昇しており、現在のモンゴルは、世界的に見ても極めて都市一極集中の進んだ国家と言えます。

もともと遊牧民であった彼らは、ウランバートル近郊に移動式住居であるゲルを建てて定住生活を始めました。これがいわゆるゲル地区と呼ばれる都市周縁地域です。現在ウランバートルの人口の約 60% がこのゲル地区に居住しています。ゲル地域は市周縁部において継続的に拡大を続けており、特に北部丘陵地の谷間沿いや緩斜面でその傾向が顕著にみられます。

市街へアクセスよく、中流層も居住するゲル地区

多数のアパート入居希望者と圧倒的な住宅不足

モンゴルでは 2003 年に土地私有化法が施行され、個人が一定区画を居住やビジネスのために無償で所有することが認められています。つまりゲル地区の住民はみな、合法的に自分の土地で生活しているのです。しかしその一方で、都市開発計画が効果的に実施されない現状あり、結果的に周縁地域での無秩序的なゲル地区の拡大が続いています。

ゲル地区は市街地へのアクセスが良いため、貧困層のみならず大学講師や医者、政府関係者などの中所得者層も居住しています。彼らの多くはアパートに住みたいと希望しながら、恒常的な住宅不足によってゲル地区に留まることを余儀なくされているのです。

不便で困難な生活環境

基本インフラの未整備と環境汚染、毎日の水汲みや災害リスク、貧困も

ゲル地区では、人々は自分の土地を木柵で囲み、その中に遊牧民の移動式住居であるゲルや、固定家屋を建てて暮らしています。しかし、元来移動を前提とした住居であるゲルでの定住生活は必ずしも快適なものではありません。

水道、舗装道路、熱供給システムといった基本インフラは未だ十分ではありません。井戸や水汲み場が遠い居住区画も多く、そのような世帯では子供たちが毎日荷車で水を運ぶ様子が見られます。屋外の共同トイレを使用せざるを得ない家庭も多く、し尿処理、ごみの投棄も問題です。また、間に合わせの小売店があるだけで、市場もスーパーが無いなど、生活環境も整ってはいません。無秩序的に広がる土地所有のために、川に近く洪水の危険のある土地に住まざるを得ない世帯もあり、非常通路や避難所等の災害対策もなされていないのが現状です。

また貧困問題も多く、場所によっては居住している世帯の 70% 前後が貧困家庭である地区も存在しています。このような地区では失業やアルコール依存、治安なども問題です。皆が移住者であるために隣人同士が知り合いであることは珍しく、相互扶助関係にも限界があるのです。

1 世帯 5 トンの石炭消費と深刻な大気汚染

マイナス 40 度の冬とくっきり見える灰色の空気

冬場には気温がマイナス 20 度から 40 度まで下回るモンゴルでは、石炭ストーブで暖をとることが欠かせません。季節になると、このように石炭売りが軽トラックの荷台いっぱいに石炭を積んでゲル地区を回る光景が見られます。住民たちはそれを大袋に詰めたり、リアカーに積んだりして買い求め、冬の間の生命線とするのです。一説には、一冬で一世帯当たりおよそ 5 トンの石炭を消費するとも言われ、70 万人が密集したゲル地区の空気はマスク無しでは歩けないほどに汚れます。

このように、外から見るとウランバートル上空だけ空気の色が灰色に変わっている様子がくっきりと見て取れます。

また年間に渡って気温の低いモンゴルでは、放置されたゴミが腐ることがありません。そのため、石炭を買えない家庭ではそのような道で拾ってきたゴミを燃料として燃やすことも多く、これも大気汚染の原因の一つと考えられています。

大気汚染と健康被害

呼吸器疾患の増加、都市の子供の疾患発生率5-15倍

2011 年に発表された世界保健機関のランキングではウランバートルは、インド、パキスタン、イランなどの大都市と並ぶ、世界で最も空気が汚染された都市とされています。微小な粒子状物質は人間の肺などの呼吸器官に悪影響を与え、血液にも浸透して様々な病気の原因となります。モンゴル人の 5 台死亡原因の一つは呼吸器疾患ですが、近年は急速に症例が増加しています。またモンゴル厚生省は 16 歳までの子供がぜんそくにかかる原因の 56.6% は粒子状物質であり、特に都市部に育つ子供たちは、地方に育つ子供たちに比べて慢性気管支炎と肺線維症を 5-15 倍の割合で発症し、医療を受ける割合も 7-8 倍以上に上ると公表している。

モンゴル政府最大の課題である住宅供給

再開発プロジェクトで誰もに「夢のマイホーム」を

このように無秩序的なゲル地区の広がりは、自然環境や生活環境の悪化を招くだけでなく、社会インフラ整備などの都市的サービスのコスト増大、都市成長管理の欠如など様々な問題を引き起こしています。

もともとゲル地区に住む住民は、よりよい生活を求めて地方からウランバートルに移住した人々です。彼らの多くは、生活環境の整備されたアパートで安心して暮らすことを望んでいます。近年の経済成長に伴って、その需要はますます高まっており、モンゴル政府にとって彼らへのアパート供給と地区整備はなによりの急務となっています。

本プロジェクトの完成イメージ